【Sciurus17活用事例紹介】国際技術コンテスト「ANA Avatar XPRIZE」に出場!H2L株式会社様特別インタビュー

商品紹介

今回はアールティ製品を実際にご活用いただいている方への特別インタビュー企画です。

東京都港区で新世代の感覚共有技術BodySharing®︎の研究開発、事業開発を行うH2L株式会社様が、この度アールティのSciurus17を使って国際技術コンテスト「ANA Avatar XPRIZE」に出場してくださいました。

「ANA Avatar XPRIZE」は2020年からエントリーが始まって現在も進行中のコンテスト。

H2L株式会社様は、世界各国から集まった多数のエントリーの中からセミファイナリスト38チームに選出され、9月にマイアミで開催されたセミファイナルに出場されました!

ANA Avatar XPRZIE公式動画

ANA AVATAR XPRIZE Semifinals Testing 2021

Sciurus17をアバター用ロボットとして採用いただいた理由や、研究開発を通じて目指す未来について、セミファイナル出場を終えた研究開発部エンジニアの細野様(チームリーダー)、齋藤様のお二人にお話を伺いました。



ANA Avatar XPRIZE 概要

現地にいる「アバター(=分身)」を用いて、人間の感覚、行動、存在を遠隔地からリアルタイムに体験し、よりつながりのある世界を実現するアバター・システムの開発を目指す、賞金総額1,000万ドルの国際技術コンテストです。

アメリカを拠点に世界中のイノベーターのチャレンジをサポートし続けているXPRIZE財団が主催し、全日本空輸株式会社(ANA)がスポンサーとなっています。

ANA Avatar XPRIZE公式サイト

ANA Avatar XPRIZE | XPRIZE Foundation
The M ANA Avatar XPRIZE aims to create an avatar system that can transport human presence to a remote location in real time.

ANA公式サイト What’s up ANA内記事「ANA AVATAR XPRIZEが始まりました!」

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「ANA Avatar XPRIZE」エントリーのきっかけ

ーーー本日はセミファイナルから帰国されたばかりのお忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いします。

細野様・齋藤様:よろしくお願いします。

ーーーまずは、今回「ANA Avatar XPRIZE」にエントリーしたきっかけを教えてください。

細野様:H2LはBodySharing®︎というビジョンを掲げています。サイバー空間のキャラや物理的なロボット、人間と体験や感覚を共有し、最終的には人と人を繋いで体験を共有したいと思っていて、人と人を繋ぐ前のワンステップとしてロボットとの体験に取り組みたかったのがエントリーのきっかけです。

ーーー「ANA Avatar XPRIZE」自体はどこで知ったのですか?

細野様:このコンテスト自体が始まる前に、審査を行う事務局の方が審査基準、評価基準などを決めるためにアバター関連の企業や研究者へヒアリングを行っていたのですが、その中でH2Lにもお声がけいただき、コンテストの存在を知りました。

ーーー人と人を繋ぐ前のワンステップとしてロボットでの体験に取り組みたいとのことでしたが、目指す未来に対しての最初の一歩がロボットなのでしょうか?

細野様:BodySharing®︎実現のためのステップとしては全体で3つあって、まず1つ目はVRなどバーチャル空間のキャラクターと人との体験共有です。その次にロボットと人、最後に人と人…という流れで考えています。現在は2つ目の、ロボットと人との体験共有に取り組んでいるということになります。

細野様:元々弊社は「PossessedHand(ポゼストハンド)」というを電気刺激で指を動かすデバイス作ったところから始まっていて、直接電気刺激で指を動かすことで、より直感的に体験を共有することを目指して始まった会社なんです。そこからさらに広げていくためには、バーチャルだったりロボットだったり、そういったところから積み上げていかないとね、とこのようなステップを刻んでいます。

「PossessedHand」

PossessedHand

審査基準・セミファイナルについて

ーーーここからは「ANA Avatar XPRIZE」の内容に触れていきたいと思います。まず審査基準などをコンテストのHPで拝見したところ、国内の他のロボットコンテストと比べると条件にかなり自由度があるように思いました。

細野様:そうですね。このコンテストは、一般的なロボットの大会とは違って決められた環境やルール下でタイムなどを競うことが目的ではなく、アバターや遠隔操作技術を使ったマーケット自体をゼロから作り出そうという目的があるので、色々自由度の高いコンテストだと思います。

―――そんな自由度があるなかで、どのようなコンセプトで望まれましたか?

細野様:H2Lには「PossessedHand」や「UnlimitedHand(アンリミテッドハンド)」という電気刺激を使えるデバイスがあるので、それらを使って「ロボットの感覚を遠方の操作者にフィードバックをして体験を共有する」を目指しました。とくに重量の感覚の提示を電気刺激を使ってやろうと考えていました。

ーーーアバターを操作する審査員が重量を感じられるようにしたということですね。どれくらいの重さのものを持つのですか?

細野様:1kgいかないくらいのものですね。

ーーーセミファイナルでは実際にどのような課題に取り組んだのでしょうか?また、その中でとくに難しかったものは??

細野様:まず会場の構成としては、操作者(審査員)がいる部屋と、ロボットが置いてある部屋の2部屋が用意されていて、そこをネットワークで繋いで遠隔で操作することになっています。ロボットの部屋ではロボットの前にコミュニケーション相手として人(審査員)がいて、やりとりをしながら作業を進めます。ちなみに出場チームの技術情報保護のためにチームごとに部屋が用意されるので、他のチームの審査の様子は見ることが出来ません。

細野様:審査基準としては、ロボットを通して操作者とちゃんとやりとりしている感じがあるかというのを評価されます。「体験を遠隔で共有すること」に合わせて色んなタスクがありました。難しかった課題としては、特に、取っ手のついた厚みのある木製パズルを、凹みに入れる課題が難しかったです。

セミファイナルの様子。パズルのタスクをこなすSciurus17。テーブルを挟んだ反対側には審査員が座っていて、会話やハイタッチなどのコミュニケーションも行う。

なぜSciurus17を採用?

ーーー今回Sciurus17をコンテストに使用するロボットとして選んでいただいた理由を教えてください。

細野様:購入の決め手となったのは価格でした。もともと色々なヒューマノイドロボットで引き合いをいただいていたのですが、費用的な面がネックになっていて…。そこで弊社代表の玉城がネット検索でSciurus17を見つけました。ヒューマノイドロボットで330万円(税込)という価格にはそれまで出会えなかったので、これだ、と決まりました。

細野様:またROSのライブラリがいっぱい用意されていて、特に購入前にライブラリの中身をGitHubで見られたのも良かったです。

ーーーアールティでは研究開発をされてる方々にヒアリングしながら製品開発を進め、Sciurus17のような製品を生み出しています。カスタマイズ性や持ち運びのしやすさも重視しているのですが、その辺りの使用感はいかがでしたか?

細野様:頭の部分の見た目や色を変えたり、手先にも触覚センサを入れたり、色々カスタマイズを行いました。ハードのカスタマイズについては川渕機械技術研究所の川渕氏に依頼していました。元々ロボットを自分で全部色々作ったりされている方なんですが、3Dデータが全部公開されているので作りやすかったと言っていました。

カスタマイズしたSciurus17。4本指で手先に触覚センサが入っている。

細野様:ソフトウェアではROSのライブラリを活用させてもらいました。リアルタイムで角度を送って制御するという動きについては元々のライブラリになかったので、そこは自分たちで作成しました。公開されているプログラムは動作計画を立ててそれに合わせて動く流れになっていたので、リアルタイムで動かすにはちょっと厳しいかなという感じだったので新しく作りました。ただGitHubでソフトウェアの部品が公開されていたのでその辺りは結構スムーズに進みました。

開発中の様子。左側に座っている方が操作者。

ーーー協働ロボットとして力が強くなりすぎないように控えめのトルク、軽量で作られているSciurus17ですが、細かい動きの実現など、アームの制御の面で苦労されたところはありますか?

齋藤様:位置制御で動かしていたのですが、アームがピタッと止まるわけではないので最初は少し苦労しました。腕が目的対象に合わせられないほどズレることはなかったのでその部分は全然大丈夫でした。

ーーーセミファイナルの会場であるアメリカまで、Sciurus17を持った長距離の移動はいかがでしたか?移動時の耐久性の不安はありましたか?

細野様:Sciurus17は軽量で運びやすく移動時はとても助かりました。他の機材や自分たちの荷物も含めてスーツケースが4つありましたが、Sciurus17を入れたスーツケースが一番軽かったです。しっかり緩衝材で守られていたので壊れる心配もありませんでした。

ーーーH2L株式会社様には先日2台目のSciurus17もリピート購入いただいています。こちらはコンテスト以外にお使いになるとのことでしたが、差支えなければ用途やリピートの理由をお教えいただけますか?

細野様:詳細なプロジェクト内容についてはまだ公にできないのですが、実証実験で今回「ANA Avatar XPRIZE」でやったようなシステムが何か使えないかなと思って購入しました。価格感も良いですし、今回のコンテストに向けた開発で使いやすく感じたのでリピートさせていただきました。

ーーーSciurus17に今後実装されたら嬉しいものや、ご要望はございますか?

細野様:触覚センサを入れられる場所がグリッパにあると嬉しいです。さらに、今の価格帯では難しいと思いますが、指が5本あったらいいですね。

ーーーありがとうございます。実際に使用した方からの貴重なご意見をいただけるのはとても嬉しいです。今回頂いたお声は弊社エンジニアにフィードバックさせて頂きます。

今後の展望について

ーーー今回のコンテスト「ANA Avatar XPRIZE」で活用し、日頃の研究開発でも注力されている御社の技術について、今後役立てていきたい分野を教えて下さい。

細野様:役立てていきたいのは技能伝承の分野です。例えば熟練の工場作業者がやっている作業をデータ化して人やロボットに伝達できるようにすることを目指しています。今はH2Lのデバイスでデータを取って機械学習を使って分析したり…みたいな段階に取り組んでいるのでその次のステップでロボットに実際に入れてやっていきたいと思っています。

ーーー昔は「目で見て盗め」などと言われていた職人技を体感的に教えられるようになるとのはとても良いですね。技術を後世のために保存する、ということも考えられているのでしょうか?

細野様:そうですね。今ちょうど色々な企業の工場と共同で取り組んでいます。

ーーーもっと人の暮らしに身近なところで注力していきたい分野はありますか?

細野様:技能伝承の一環として楽器演奏やスポーツの分野に適用出来たらいいなと思っています。特にそういうスキルは言語化するのが非常に難しいので、それを直感的に習得できるようにしていきたいですね。

ーーー直感的にできれば、世界中で言葉の壁も乗り越えられて良いですね。

細野様:そうなれればすごく良いですね!

ーーーそういった分野への貢献を目指すにあたって、Sciurus17は御社の研究開発にお役に立てそうでしょうか?

細野様:Bodysharing®のテストをする時に、「物理的な実体がある」という面ですごく役立てられそうだと思っています。例えば、電気刺激のテストで人に直接電気を流すときに、試すために何回もやっていくと不快感があるのですが、そこをロボットを使って色々試すことが出来るのがいいです。

ーーーH2L株式会社様の取り組まれているBodysharing®の魅力はどういう所にあるのでしょうか?

細野様:実際に移動しなくても遠隔地で体験ができるのがBodysharing®の魅力の1つだと思っています。今回「ANA Avatar XPRIZE」では作業するというところにフォーカスしていたのですが、実は以前カヤックを使った遠隔操作のプロジェクト(※)をやっていました。このような観光にも適用出来て、いつでもどこでも離れた場所の景色や音、操作感などが体験ができるというのはとても魅力です。

※2019国際ロボット展でお披露目されています。下記記事参照。

水がないのに漕いでる感覚。遠隔体験カヤックがお披露目:2019国際ロボット展 - Engadget 日本版
東京ビッグサイトで12月18日に開幕した展示会「2019国際ロボット展」から。VR/ARデバイスや医療関連機器などを開発するスタートアップ企業H2Lは、NTTドコモと共同開発した「遠隔操作カヤックロボット」を出展しています。 VR技術の登場により、視覚や聴覚を伝達する技術が発達しています。それに応じて高まりつつあるの...

細野様:とくに5Gが普及し始めたことで、遠隔で体験する時の映像や感覚のデータ遅延が少なくなってきています。コロナ禍で外出が難しくなったので、こういった技術を使って外を体験できればいいんじゃないかとお話をいただくようになりました。

ーーーコロナ禍で、より「リモート〇〇」の分野が注目されていますよね。こちらのカヤックは実際に海上で漕いだこともあるのでしょうか?

細野様:ドコモさんと5Gの実証実験を2019年にやっていて、その際には沖縄県の海にカヤックを浮かべて、宮崎県から動かしたことがあります。ここからさらに発展させて色々な体験を共有してもらえたらと思っています。

ーーー今回の「ANA Avatar XPRIZE」を皮切りに、新たなコンテストも開催されると思います。今回取り組んだ技術をこれからどのように磨き上げていきたいですか?また会社としての今後の展望も聞かせてください。

細野様:コンテストに向けては、より精密な作業ができるようにしていきたいと考えています。例えば、指を5本にするなどのアレンジを加えた上で、ネジ締めや半田付けなどの細かい作業を人が遠隔地からできるようにしていきたいですね。会社としても、この技術をリモートワークなどの遠隔での作業や勤務に適用していけたらと考えています。

ーーー細かい作業に対応できると活躍の場も広がりそうですね。Sciurus17に限らず、様々な機能を搭載したH2L株式会社様のデバイスを拝見できるのを今後も楽しみにしています。

最後に

H2L株式会社様が取り組まれているBodysharing®をはじめ、テレイグジスタンス※やアバター操作といった新しい技術分野が今世界で注目され始め、ゲーム、観光、医療、災害救助、芸術など様々な業界への応用が検討されています。

※「遠隔存在感」「遠隔臨場感」とも言われる、人が遠隔地にあるアバターやロボットを通じてあたかも自分がそこにいるかのような感覚を得ながら行動することを可能にする技術

世界各地の企業、研究機関で研究開発が進められ、「ANA Avatar XPRIZE」のような技術コンテストも今後増えていくと思います。

これからマーケット創出をしていこう、という盛り上がりを見せる分野で、アールティのSciurus17をボディとなる人型ロボットとして採用いただき大変光栄に思っています。

細野様、齋藤様、お忙しい中お時間いただきましてありがとうございました。今回はコンテストのことだけではなく、便利な未来がすぐそこまできていると思えるような、ワクワクするお話をたくさん聞かせて頂きました。

今回お聞きした話を開発者にフィードバックし、今後もより良い製品開発に努めて参ります。本当にありがとうございました。

取材協力:H2L株式会社様

製品紹介「Sciurus17」

頭部に3次元距離カメラ搭載。位置・速度・電流(トルク)制御を選択可能な上半身人型のヒューマノイドロボット。
※受注生産品(通常納期約3ヵ月)
※RT ROBOT SHOPからはご購入いただけません。下記製品ページよりお問い合わせください。

Sciurus17 研究用上半身人型ロボット
ROS対応 研究用上半身人型17軸ロボット 頭部に 3 次元距離カメラ搭載の位置・速度・電流(トルク)制御を選択可能な上半身 人型のヒューマノイドロボットです。 受注生産品 ROSパッケージを GitHub にて公開 改 …

 

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