RoboCup Humanoid League世界大会に挑戦するチーム「CIT Brains」メンバーへの特別インタビュー

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アールティはRoboCup Humanoid League世界大会に挑戦するチーム「CIT Brains」をスポンサーとして応援しています。

CIT Brainsは、千葉工業大学の学生を中心に構成されたロボット開発チームです。
2006年から、ロボット競技会RoboCupの一部門であるRoboCup Humanoid Leagueに継続的に参加しています。
Humanoid Leagueでは、日本国内で唯一世界大会に出場しているチームです。
Github:https://github.com/citbrains

RoboCup(ロボカップ)とは?

ロボカップは、ラジコンのような人の操作によって動くロボットではなく、自分で考えて動く自律移動型ロボットによる競技会です。サッカー競技を題材として日本の研究者によって提唱されました。

現在はサッカーの他に、災害現場の復旧を目的とした「レスキュー」、生活支援ロボットの「@ホーム」、物流や倉庫管理システムの「インダストリアル」、次世代の技術者を育てる「ジュニア」の競技もあります。

RoboCup Humanoid Leagueは、KidSize(身長40~100cm)、AdultSize(身長100~200cm)の2つのサイズクラスに分類されます。

2023年の世界大会はフランスで開催され、2024年はオランダ、アイントホーフェンで開催予定です。

Robocup 2024

CIT Brainsの活躍

CIT Brainsが取り組むKidSizeでは、4体 vs 4体のサッカー競技「Soccer Competition」、複数チームが1体ずつロボットを出してサッカー競技を行う「Drop-In Challenge」、キックの能力などヒューマノイドロボットによるサッカー競技に関する要素技術を競う「Technical Challenge」、各チームが新規開発したソフトウェアについてプレゼンテーションを行う「Software Challenge」の計4種目でそれぞれ順位が決まります。
参考:https://humanoid.robocup.org/ ,https://humanoid.robocup.org/materials/rules/

CIT Brainsは多数の受賞歴があり、2022年の世界大会@タイではSoccer Competition、Drop-In Challengethingで優勝、Technical Challengeで第3位。

2023年7月に開催された世界大会@フランスではSoccer Competition、Drop-In Challengeで準優勝、Technical Challengeで第3位の成績を収めています!

井上さんへインタビュー

昨年、アールティ代表の中川やエンジニアが、CIT Brainsのメンバーである井上さんへインタビューをさせていただき、2023年世界大会出場時のお話や今後の目標などを伺いました。

インタビュー内容の一部を本ブログにてご紹介します!

 

お話を伺えて嬉しいです。よろしくお願いします。

井上さん:よろしくお願いします。

 

CITBrainsは現在何名で活動されていますか?井上さんのご担当は?

学生5名、教授1名の計6人で活動しています。私はソフトウェアシステムの設計と歩行制御を担当しています。

 

2023年の世界大会はフランスでの開催でしたが、いかがでしたか?

前回(2022年)はタイだったので日本から近かったのですが、今回のフランスは遠くてロボットの運搬方法など、遠征が大変でした。

例年通り、一般の方も入れる会場で開催されていたのですが、地元の小中学生くらいの子が観戦に来ていたり、サッカー好きが集まっていて流石サッカー大国だなという印象がありました。

また、優勝したチームがフランスのチームだったのですが、決勝で対戦したとき、相手チームがゴールを決めると会場は拍手喝采でアウェイ感がありました。

相手のチームはここ10年間で5回くらい優勝してる強豪チームで、CIT Brainsがここ7年くらい決勝や準決勝で勝ったり負けたりしているので、個人的にはライバルチームだと思っています。

チームとしての最大の目標は総合優勝ですが、私としては最近の大会は「フランスチームに勝つ!!」という意気込みで臨んでいます。

 

決勝戦を振り返っていかがでしたか?

決勝戦の前半は実力が拮抗した良い試合内容で2-2でしたが、後半3点を取られ、こちらは1点も取れず敗れました。
試合後半では、ロボットのソフトウェアの一部で不具合がおき、1、2台ほど上手くプレーができないロボットがいました。

個人的には、大会ギリギリにロボットが完成して、新規導入の技術に関する検証とデバッグが不十分だったことが、決勝で不具合がでた理由として大きいと予想しています。
前半はあんなに良い展開だったのに!と悔しかったです。

決勝戦の動画(3:20:40頃から)

 

前回から、2023年の世界大会に向けて新しく試みたことを教えてください。

私は、今回の大会ではロボットのソフトウェアシステムのアーキテクチャを変更・改善する作業を行いました。
私たちのチームでは直近数年間同じアーキテクチャを使用しているのですが、様々な機能の追加や大規模化により、アーキテクチャがシステムに合わなくなってきているのが問題でした。

ソフトウェアのコンポーネント間の通信に使うライブラリやツールの開発などを行い、新たなアーキテクチャを採用するために必要なミドルウェアのようなものを開発しました。
アーキテクチャの完全な置き換えは間に合わず、2024年への課題として残りました。

また、他のソフトウェア担当の方がしてくれた事の1つとして、ボールを持ったロボットが敵に囲まれた際に、味方と連携してそこを抜けるチームプレーの実装があります。

前年までは適当な空いたスペースにボールを蹴り出すだけで他の味方ロボットは守備に徹していましたが、2023年は攻撃時に他の味方ロボットがボールを持ったロボットのフォローに入ることで攻撃に厚みを増しました。
これにより、空いたスペースに蹴り出されたボールを味方ロボットが受け取ることができ、パスに近いような動きになりました。

メンバーの努力のおかげで、これらを組み込んだ戦略は試合の中で有効に働き、ロボットにより賢い動きをさせることができました。

 

ソフトウェアは今までの卒業生の方が残したものを活用していますか?

長年引き継いで開発しています。
引き継ぎは技術の継承がしやすいなど、良い部分もありますが、機能を継ぎ足すような形で開発をしていくと、ソフトウェアの結合度が高くなりやすいという欠点もあります。
こうなると新しい機能を追加するのが難しくなるなどの悪影響があります。

私達は毎年新しい機能を追加する事を意識していますので、これは大きな問題です。

この状況を解決するために、先ほどお話したように今大会はソフトウェアアーキテクチャの改善を試み、各機能毎の結合度を下げ、なるべく独立させるべく開発をしていました。

結局今回の大会までには全体の更新は間に合いませんでしたが、チームが今後苦労しないためにも、なるべく早く改善を完了したいです。

リファクタリングしながら開発していくのは大変ですが、動かしながら直していくのはとてもいい取り組みですよね。ためになるのではと思います。

 

大会中印象に残った出来事は何ですか?

会場に着いて準備中に、ロボットに搭載しているWi-Fiモジュールのデバイスドライバの設定にミスがあって、試合中のロボットの行動に必要な情報が審判から受け取れない状態になっていたことが判明して、そこから大騒ぎでした。

ロボットはLinuxで動いているのですが、大急ぎでLinuxカーネルのビルドをして、ギリギリでサッカーの試合直前にやっと動いたという感じでした。 

準備期間のときに発覚したのでまだ良かったと思いますが、Drop-In Challengeの種目では、上記の問題がまだ完全に治っておらず非常に苦労しました。
その中でもメンバーがなんとか種目に参加できる形にしてくれて、2位を獲得することができましたが、1位を逃したのは悔しかったです。

他には、今までの大会との一番の違いとして、2023年の世界大会から各チームがそれぞれの開発したソフトウェアについてポスター発表するSoftware Challengeという種目が追加されました。
私がこの種目を担当したのですが、発表日が決勝の前日だったりとロボットの調整もある中で時間をとるのが大変で時間が足りず、原稿は発表本番ギリギリに完成しました。。。

本番ギリギリに!! お話を聞くだけでも当日の緊張感が伝わってきますね…!
現地の貴重なお話をありがとうございます。

 

RoboCup 2024に向けての目標を教えてください。

世界一になる、というのが第一の目標です。

チームではそれを達成するために意識しているのが、検証とデバッグを徹底的に行う、ということです。
それらに十分な時間を割くのはもちろんですが、方法についてもより良くしたいと思っています。

例えば、大学にあるフィールドで行う模擬試合がデバッグをするにあたって大きな要素なのですが、その際にロボットの動作データをロギングするようなシステムを作っています。

サーボモーターやバッテリなどのハードウェア情報から、カメラの認識や自己位置推定の結果などのソフトウェア情報など、なるべく多くの情報を保存してデバッグに使おうとしています。
データ量が多くなればその分処理が重くなるので、ロボットの歩行など既存の機能に影響を及ぼさないように、その辺りを工夫して策を練っているところです。

また、チームでは検証とデバッグのためにシミュレータ上で4 vs 4のサッカー試合ができるシステムも構築しており、ここでも試合を行っての検証をしています。
私は、このシミュレータも、より現実とのギャップを少なくするように、そしてより処理を軽くして実時間で動くようにして検証のサイクルを速くしたいと思っています。

もちろん、検証だけでなく新規機能も導入したいです。制御担当の私としては、新しい歩行制御手法を導入して、今よりももっと安定した歩行にしたいと考えています。

RoboCup 2024では世界一を取れるように頑張っていきます!

 

改めて、RoboCupの面白さは何だと思いますか?

ロボット競技会全般にいえることですが、ロボットをただ作るだけで終わりにするのではなく、そのロボットを実際に応用して、試合で使って結果を出すのが面白いです。

RoboCupの話で言えば、RoboCupには2025年までに人間に勝てるロボットを作るという競技会発足当初からの目標があるので、競技会自体の発展のために各チーム協力しながらこの目標を目指しています。

特に、私達が参加しているHumanoid Leagueは、目標達成のためにハードウェアとソフトウェアをオープンにして積極的に公開したり、技術交流したり、お互い刺激し合いながら成長していけるのが面白いところだと思います。

特にHumanoid Leagueは各チームが最新技術を積極的に組み込んでいくので、毎年の大会で各チームの新しい技術を見てワクワクするのが楽しいです。


RoboCup Humanoid League HPより

 

これからRoboCup競技を始めようという方に向けて一言お願いします!

RoboCupに参加するにはたくさんの分野の知識が必要で、時間もかかり、一人では難しいですが、だからこそ一緒に取り組む仲間を見つけ、チームで結果を出す達成感が素晴らしいものだと知ってほしいです。

ぜひあなたもRoboCupに参加してみてください!

井上さん、ありがとうございました!

最後に

RoboCup Humanoid Leagueの世界トップクラスで挑戦し続けているCIT Brainsの貴重なお話を伺うことができました。

お忙しい中インタビューのお時間をいただきありがとうございました。
RoboCup 2024の優勝目指してこれからも頑張ってください!

 

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アールティはLife with Robot(ロボットのいるくらし)の実現を企業理念に掲げ、アールティのロボットをたくさんの方にご利用いただくだけでなく、世界中にロボットを作る人、使う人が増えてほしいと願っています。

ロゴのうさぎも、うさぎが子沢山の象徴であることから、ロボットを作るエンジニアがたくさん育ってほしいという想いが込められています。

ロボット競技の存在やそれに取り組む方々を紹介することも、業界を発展させるひとつの手段だと思います。
この記事が、RoboCupについて興味を持つきっかけになったり、同じRoboCupに取り組む方のモチベーションに繋がれば嬉しいです。

今までロボット競技会を見たことがないという方も、ぜひ国内外で開催される様々なロボット競技会に足を運んでいただき、ゆくゆくは参加する側にもなっていただければ幸いです。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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